少なくとも300万円!?成年後見制度に必要な費用感は?
目次
- 成年後見制度の概要
- 成年後見人を専門家に頼んだ場合の費用
- ①申し立てにかかる費用
- ②後見事務開始後にかかる費用
- 成年後見以外の制度とその落とし穴
- 1:任意後見制度の落とし穴
- 2:家族信託の落とし穴
- その他の生前対策との料金比較
- 1:任意後見制度利用にかかる費用
- 2:家族信託の利用にかかる費用
1. 成年後見制度の概要
成年後見制度(法定後見)は、認知症や事故などで判断能力が低下した人を支援する仕組みです。本人を詐欺や悪質商法などのリスクから守り、代理で法律行為を行う成年後見人が選任されます。
制度は支援の強さに応じて「後見」「保佐」「補助」の3種類に分かれ、特に「後見」は判断能力を欠く場合に適用される最も強力な支援形態です。一度利用を開始すると、原則として本人が死亡するまで継続されます。
2. 成年後見人を専門家に頼んだ場合の費用
成年後見制度の費用は、大きく「申し立てにかかる費用」と「後見事務開始後の費用」に分かれます。
① 申し立てにかかる費用
家庭裁判所での手続きに必要な費用の一例は以下の通りです:
- 手数料(家庭裁判所):800円
- 切手代:5,000円程度
- 本人・候補者の住民票、戸籍謄本、登記されていない証明書等:2,050円程度
- 診断書:1万円程度
- 鑑定費用:10万円程度(必要な場合のみ)
- 専門家報酬(手続き代行):10~30万円程度
これらを合計すると、申し立てにかかる費用は約22万~30万円程度と見込まれます。
② 後見事務開始後にかかる費用
後見開始後の継続費用は以下の通りです:
- 成年後見人の報酬:月額2~6万円程度
- 後見監督人の報酬(必要時):月額1~3万円程度
仮に第三者後見人が10年間担当し、後見監督人が付かない場合を想定すると、後見人報酬の累計で約240万円が必要となります。
【トータル費用の目安】
申し立て費用と後見開始後の費用を合計すると、最低でも約300万円弱が必要になります。
3. 成年後見以外の制度とその落とし穴
1:任意後見制度の落とし穴
- 取消権が無い:任意後見人は、本人が不利な契約をしても取り消すことができません。
- 適切な時期に発動できない可能性:受任者や家族が手続きを怠れば、制度が発動せず不利益を被るリスクがあります。
- 財産横領の危険:契約発動前に財産管理契約が悪用される恐れがあります。
2:家族信託の落とし穴
- 損益通算ができない:信託財産の赤字は他の財産の黒字と相殺できません。
- 税務手続きが煩雑:信託財産の運用に伴う書類提出が必要です。
- 専門家不足:家族信託に精通した専門家はまだ少数です。
4. その他の生前対策との料金比較
1:任意後見制度利用にかかる費用
- 契約締結時の費用:約15万円~
- 任意後見監督人の報酬(10年間):約120万円~
合計:約135万円~
2:家族信託の利用にかかる費用
- 専門家報酬:約30~50万円
- 公正証書化費用:約5万円
- 信託登記関連費用:約11万円(仮に2千万円の土地を信託した場合)
合計:約46万円~
【まとめ】
成年後見制度は最低でも300万円前後の費用がかかり、生存期間が長いほど増加します。他方、任意後見や家族信託は事前準備が必要ですが、比較的費用を抑えられます。
認知症や判断能力低下のリスクを見据え、どの支援策が適切か検討するには専門家の相談が欠かせません。特に家族信託は、信託設計や実行時のリスクを考慮した上での慎重な判断が必要です。